こども食堂

■「こども食堂」開設の経過

  ホウネットでは、地域の人々の支えになる相談センターを2013年開設しましたが、その過程で社会的な問題になっていた「子どもの貧困問題」に大きな関心を持ち、たびたび学習の機会を持っていました。

 2014年に厚労省が発表した「6人に一人の子どもが相対的貧困家庭にいる」という報告にも大きな衝撃を受けました。

 北医療生活協同組合が開設していた乳幼児と保護者のためのあそび場は大変活況でした。

 ところが、このフリースペースでのつながりは子どもが3歳ほどになると交流が途絶えてしまうという残念な状況があり、学童期の子どもやその親たちとのつながりづくりを模索していた時に、「子ども食堂」という活動があることを知りました。

 また、2014年から北医療生協では名古屋市の生活困窮世帯向けに中学生の学習支援事業を受託していました。

 その学習支援(寺子屋学習塾)へ来ている子どもたちの雑談から「夏休みで給食がないと痩せる子がいる」という言葉にショックを受け、支援の内容も「食べることがいい」と思いました。当時、名古屋市内には子ども食堂がなく、東京の子ども食堂へ見学に行きました。

 そしてホウネット、名北福祉会、北医療生協が集まって3団体で共同の活動ができないかと具体化を急ぎました。

 

■地域まるごとを視野に

  この3団体が協同で子ども食堂を運営する方針を軸足にして動き始めました。

3団体がともに対等平等の関係を確認し、団体法人による初めての協同の取り組みとして子ども食堂が2015年11月にスタートしました。北医療生協のわいわいルームで行う子ども食堂なので「わいわい子ども食堂プロジェクト」と名付けました。

 「名古屋市内で初めての子ども食堂」とマスコミにも多数取り上げられ、想定外の反響をうけたスタートでした。年々、多様な方々が見学・来訪され、参加いただけるボランテイアも集まり、企業からの支援もありました。

 2017年には名古屋市内や愛知県内で他にも子ども食堂が誕生し始めたことから、愛知県に「子ども未来応援グループ」が設置されました。2017年6月には「あいち子ども食堂ネットワーク」が誕生し、現在もわいわい子ども食堂プロジェクトから役員・幹事を派遣し、この地域での子ども食堂のリーダー的な役割を果たしています。

 その後、2018年には”味鋺地域にも子ども食堂を”との声に応えて、楠地区会館の館長の理解をいただき、地域の民生委員有志の方の力も借りて「あじまわいわい食堂」が誕生しました。

 各子ども食堂は地域の方が楽しみにする居場所となり、毎回150食、多い時には200食もの食事を提供する盛況ぶりでした。発足から5年が経過し順調に発展してきた子ども食堂。そんな時に訪れたのはコロナ禍です。

 

■新型コロナ禍による活動形式の変更

 2020年春からのコロナ禍はつらく苦しい期間でした。

 「学校休校、給食がない」「会食ができない」「会場が使えない」「医療生協は厳重な警戒」などなど。今思い起こしてもほんとうに残念なつらい日々でした。

 これまでにない苦境のなかでも3団体の知恵を集めて、せっかく紡いできたつながりを切らしたくないとの一心と地域の方の困難を励ましたいというささやかな思いから、食料配布を行うことにしました。「みんなのフードステーション」と名付け、こども食堂から活動形態を変更しましたが、休むことなく定例的に活動を継続しました。

 結果、約3年半にわたる「居場所なき子ども食堂」の状態ではありましたが、フードステーション活動によって、これまでの子ども食堂利用者のみならずあらゆる世代への利用者の広がりが見られ、生活困窮の方への対応も行われました。また、長期学校休み中の平日にはお弁当配布も行い、取り組み広げてきました。

 フードステーションでは新しい企業からの支援にもつながり、現在も活動を継続できています。

 

■めいほくわいわい食堂開設、あじまわいわい食堂再開

 コロナ禍もひとまずの落ち着きを見せ、子ども食堂再開が進められました。食堂機能がある名北福祉会が新たに建てたみなみ町福祉センターを利用して、2023年6月から新たに「めいほくわいわい食堂」を新規開設しました。ようやく、「みんなで食べるとおいしいね」という以前までの会食型の子ども食堂を再開することできました。

 3年半にわたる空白があったので、開店日には利用者さんが来てくれるだろうかと大変不安でしたが、開けてみれば100人超えの利用者が「待ってたよ!」とやってきました。

 これを支えてくださっているのは何よりも3団体の関係者の皆さんの理解と、そしてずっと実際に足を運んで作業をしてくださるボランティアの皆さんの力です。さらに食材を提供してくださる企業、個人的に創立以来のご厚志をお送りくださっている皆様に感謝でいっぱいです。

  

 今年の夏休み前に「こどもの体験格差」についてNPO法人の調査結果から問題提起されました。調査では、物価高騰が続く中で学校の長期休みが低所得層の保護者には大変負担になっているとの報告がされていました。これは、子どもたちの「夏休みリスク」と言われています。学校給食がない長期休みの対策が求められているとも言えます。

 わいわい子ども食堂は地域まるごとを視野に「非選別・だれでも」を大切にして活動を行ってきました。

 子どもだけでなく、誰も置き去りしない。地域の誰もが「助けて」「困った」が言える地域づくりを目指して、協同の力で来年10周年を迎えます。

(文責 杉崎)