司法を市民に

 

 多くの市民にとって、弁護士や法律事務所、あるいは法律というものは縁遠く、近寄りがたいものだと思います。そのために、身近に何かの法的紛争が生じても解決に向かわず、手遅れになってしまうケースを多くみてきました。

 そんな状況を変えるため、ホウネットは、弁護士及び法律事務所の敷居を低くして、親しみやすい存在にしたい、相談しやすくしたい、ということを主たる目的として始まりました。

 それにもつながるのですが、さらに広く、法律や司法というものについても市民が近づきやすいものにするために、「市民のための司法」を目指して様々な取り組みを続けてきました。

 

 

 ■法律相談料の割引、無料法律相談

 そんな取り組みの一つとして、ホウネット設立当初に行ったのが法律相談料の割引です。どこの法律事務所でもそうでしょうが、通常、法律相談を受けると30分5000円(税別)の相談料がかかります。当時は、法テラスなどの司法アクセスを身近にする制度が充実していなかったため、この「お金がかかる」というハードルを少しでも低くしようと考え、「ホウネット会員になると30分2000円で法律相談を受けられます」ということにしました。

 それ以外にも、年に数回の無料法律相談会を開催して、無料で法律相談を受けられるという企画も何度か行いました。

 

 ー事務所の初回相談無料化を受けて

 2014年になると、名古屋北法律事務所の制度として、「初回相談無料」が取り入れられました。この頃には、名古屋市内でも無料相談を行う法律事務所が出てきたため、それを先取りする形で始められたものです。他方でそうなると相談料の割引制度だけでは、ホウネット会員の特典としての魅力が軽減してしまいます。そのため、年に1回は無料相談が受けられるようと、会員は会員期間(当時は3年間)は3回まで無料相談が受けられるという特典に改めました。

 そしてさらに、2016年、ホウネットの会員期間が3年から1年に変更されたことに伴い、「1年間に3回の無料相談が受けられる」というホウネット会員特典になって現在に至ります。

 このように、いろいろな変遷はありましたが、一貫して経済的負担を減らして、早めに法律相談を受けられるよう工夫をしてきました。これが近づきやすい法律事務所の原点とも言える取り組みです。もっとも、法テラスなどの公的な司法アクセスも充実してきたことから、会員サービスの仕組みも再検討していくことも考えています。

 

 

■法律講座

 次に、市民が法律に親しむための取り組みとして、法律講座を定期的に開催してきました。法律は私たちを縛るものではなく、私たちを守ってくれるものだということを、広く知ってもらいたいと思っています。

 法律を知らないために、本来守られるべき権利を使わずに泣き寝入りをしてしまう、そんな悲劇をなくすために、多くの人に法律を知ってもらい、知識を武器にしてもらいたいと思い、さまざまな分野での法律講座を行ってきました。

 内容としては、相続、交通事故、労働問題、借金の整理、離婚、借家、消費者被害等々、市民に身近な法律問題を中心に、困ったときの支えになるよう法律知識の普及に努めてきました。

 最近は市民のニーズの大きさに応えるために相続問題の法律講座が中心になっていますが、それ以外にも、広い分野での法律知識の普及はホウネットの大きな役割だと思っています。

 

 ■法廷ウォッチング

 市民の皆さんに法律に親しんでもらうということの延長線上として、「裁判」に親しんでもらうことを考えて、実際の法廷、裁判を見てもらう取り組みとして「法廷ウォッチング」と称する法廷傍聴企画にも取り組んできました。

 憲法上、裁判は公開の法廷で行うとされています(第82条 公開の原則)。これは、歴史的に、密室裁判で多くの人権が侵害され、見過ごされてきたという苦痛の教訓から、裁判という権力行使は、国民の注視のもとで行わなければならないという趣旨で定められているものです。

 この原則を市民の皆さんに知ってもらい、主権者として裁判監視をする立場になってもらいたいという意気込みで行ってきました。

 これに参加した方からは、初めて目にする裁判というものを新鮮な気持ちで受け止めて、概ね良好な評価をいただいております。

 

 ホウネットは、これからも設立の原点である、法律事務所を身近なものに、法律を市民の手に、を心がけて活動をしていきたいと思います。

(文責 弁護士伊藤)